「この曲が自分の代表曲になればいい」
2018年の夏を彩る珠玉のラブソング『マリーゴールド』
春に行われた全国ツアー「AIMYON TOUR 2018 –TELEPHONE LOBSTER-」は全公演ソールドアウトに終わり、4月に発表されたシングル『満月の夜なら』もフィジカル/デジタルともに好リアクションを獲得、過去作も未だにロングセラーを続けるあいみょん。細野晴臣&星野源、岡村靖幸、Perfumeらが連載を持つ『TV Bros.』での対談連載(初回が野生爆弾のくっきー、2回目がみうらじゅんという人選もあいみょんらしい)がスタートし、10月に公開される映画『音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』では、ヒロインの吉岡里帆が歌う主題歌を書き下ろすなど、新世代のアイコンとしての存在感をますます強めつつある。
あいみょん:今の時代はただメディアに出たからって人気が出る時代ではないと思っていて、それでもテレビに出たりしたことでファンの人が増えたっていうのは、私は自分の楽曲を褒めたいし、「メディアに出ていい楽曲やったんやな」って思えたのが嬉しかったです。春のツアーは、曲を好きになって来てくれた人に、私のライブパフォーマンスや人間性も好きになってもらって、どれだけホールドできるかやなって思ってて(笑)、それはできたんじゃないかと思います。
もちろん、まだまだだとも思ってて、最近はいろんな人のライブを観に行く機会も多いんですけど、RADWIMPS、クリープハイプ、石崎ひゅーいとか、「悔しい」って思わせてくれる人が周りにいるのはいいことやなって。常に「負けたくない」って思うし、満足したくないんです。燃え尽き症候群みたいになっちゃうのは怖い。この前台湾ですごくいいライブができて、ちょっと満足しかけちゃったんですよ。でも、帰ってきてすぐに曲作りを始めた自分がいたから、安心しました。「まだ満足してないんや」って(笑)。
『満月の夜なら』から約3か月という短いスパンでリリースされる夏のニューシングルのタイトルは『マリーゴールド』。10代・20代の共感を得つつ、世代を超えて、誰しもが心の中に持っているノスタルジーへと訴えかける、あいみょん節全開の一曲だ。
あいみょん:この曲を作ったのは去年の9月なんですけど、“君はロックを聴かない”を超える曲を作らないと、私はこれからやっていけへんと思って作った曲なんです。私の中で“君はロックを聴かない”はすごく大きくて、私が一番やりたかった音楽性、憧れの人の影響を受けてできた曲だったので、あの曲を超えないと、残っていけへん気がして。なので、毎日のように曲作りをして、やっとできたのがこの曲なんです。今の私の精一杯、全力やなって思ったし、「この曲が来年の夏を変えてくれたらいいな」って思ってました。
〈麦わらの帽子の君が 揺れたマリーゴールドに似てる〉という一節がフッと降りてきたことをきっかけに書いたという“マリーゴールド”は、爽やかさとせつなさが同居する珠玉のラブソング。“君はロックを聴かない”は若い男女の恋愛をモチーフとしていたが、聴き手がより自由にそれぞれの想いや情景を重ねることのできる仕上がりとなっている。
あいみょん:私の今までの曲って、直接的な描写が多かったんですけど、今回の曲は「想像させます!」みたいな感じで、人によって物語がだいぶ変わってくる曲やと思うんです。曲って、「自分のことを歌ってるのかも」みたいに、聴いた人が自分の気持ちをリンクさせたときに残っていくものやと思うんですね。〈風の強さがちょっと 心を揺さぶりすぎて 真面目に見つめた 君が恋しい〉とか〈本当の気持ち全部 吐き出せるほど強くはない でも不思議なくらいに 絶望は見えない〉とかって、聴く人によって2人の距離感も全然違うと思うから、どんな反応が返ってくるか楽しみです。
サウンドプロデュースはもはやお馴染み、agehaspringsの田中ユウスケ。記憶の扉を開いていくような浮遊感のあるイントロから、間奏でのツインギターのハモリなど、要所に印象的なアレンジを散りばめて、あいみょんの歌とメロディーを引き立てている。
あいみょん:ライブで「大切な曲です」って言ってから歌う曲ってありますけど、この曲はそういう曲になったというか、大げさに言うと、「この曲が自分の代表曲になればいい」って思うくらいの曲です。できあがってからも、ずっとワクワクしてるんですよ。バレンタインのチョコじゃないけど、作ること自体ワクワクするし、渡すまでもワクワクするって、すごくいい感情やなって。これまではわりと「次、次」って感じやったんですけど、この曲はできてからずっとワクワクしてて、今ははよフェスで歌ってやりたいです(笑)。
今年の夏は「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」や「SUMMER SONIC」、スピッツ主催の「ロックロックこんにちは!」など、多数のフェス/イベントに出演。11月からのワンマンツアー「AIMYON TOUR 2018 –HONEY LADY BABY-」は会場のキャパが一気に拡大して、ツアーファイナルをZepp Tokyoで迎える予定となっている。
あいみょん:今年は去年出れなかったフェスにたくさん呼んでいただいて、ありがたいです。去年はちょっと強がってたというか、フェスはバンドが出るもので、私はシンガーソングライターやから、「出れなくて当然」みたいな、「フェスとか興味ないし」みたいな感じで……今思えばダサいんですけど(笑)、正直悔しい部分もあったかもしれない。でも、今年はたくさん出れるので、パフォーマンスの熱量というよりも、私は曲の熱量で勝負したい。その中で、音楽家としてこれからもやっていけるっていう、確信を掴みたいですね。
取材・文/金子厚武