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あいみょん – ノット・オーケー 【OFFICIAL MUSIC VIDEO】
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あいみょん – ノット・オーケー【OFFICIAL LIVE VIDEO】
OFFICIAL
INTERVIEW
インタビュー
朝ドラ、ジブリ、夏フェス……
濃密な2023年の夏を経て
サプライズでリリースされた新曲
「ノット・オーケー」
9月29日で全130回の放送を終えた「NHK 2023年前期 連続テレビ小説『らんまん』」。主題歌として幅広い世代に親しまれた「愛の花」は、あいみょんにとっての新たな代表曲のひとつとなった。なお、このインタビューは『らんまん』最終回の放送後に行われ、あいみょんは「あかん、昼から取材あるのに泣きすぎて顔つぶれる」とポストした後、さらに「主題歌を担当させて頂いたこと、心から誇りに思います」と続けている。
あいみょん:『らんまん』については語ると長くなっちゃうんですけど……ほんまに一言これに尽きるのは、『らんまん』でよかったなって。朝ドラって特別じゃないですか。朝ドラっていう枠があって、いろんなドラマが描かれていく中で、一生に一度の朝ドラの主題歌っていう枠を私にいただいて、それが『らんまん』でよかったなっていうのは心から思いますね。ほんまに毎朝毎朝楽しみに見てましたし、それぐらいもうファンでした。本当に素晴らしい作品に主題歌で参加できてすごく嬉しかったなと思ってます。
アーティストの立ち位置って難しいじゃないですか。作品に携わってはいるんですけど、深い関係になれるかどうかは作品と楽曲に託されてると思うんです。でも今日(最終回)はオープニングじゃなくて、最後にフルで流してもらえて、それは全然知らなくて。あと心なしか歌詞になぞらえてるような台詞がいくつかあったんですよ。2番の歌詞を結構フィーチャーしてくださってたりもして、何か少しでも作品に、脚本家の方に影響を与えられたのかなとか思いながら、正確なところは分からないからそわそわしてるんですけど……でも本当に『らんまん』で良かったです。植物はもともと好きですけど、さらに好きになりましたし、図鑑も買いましたし、今度は見たことないような学名のタイトルの曲を作っちゃうかもしれない(笑)。
『らんまん』の放送開始と時期を同じくしてスタートしたのが、追加公演含めて全40公演に及ぶ全国ホールツアー「AIMYON TOUR 2023 -マジカル・バスルーム-」。声出しも全面的に解禁となり、かつての光景を取り戻したツアーで、あいみょんは「ライブアーティスト」としてすっかりたくましくなった姿を見せてくれた。
あいみょん:今回はホールツアーっていうのもあって、もう何度も私のライブに足を運んでくださってるお客さんが多かったんですよ。アリーナとかやと半分以上が初めましてだったりもしたんですけど、今回はもう何度も来てくださってる方が多かったので、より一層ファミリー感というか、自分の仲間感というか、そういう接し易さみたいなのもあって、それはすごく良かったですね。「これが私のライブで、これが私のファン。唯一無二で、どことも違うライブ」っていうのを感じることができました。ちょうど七夕の日にライブ(岡山・倉敷市民会館)があって、そのとき願い事として「毎年ライブツアーができますように」って書いたんですけど、毎年こういうツアーができたら幸せかもと思いましたね。
7月23日の東京国際フォーラムホールAでの公演で、一旦ツアーに区切りをつけると、この夏は8月12日の「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」、8月25日の「SWEET LOVE SHOWER」といった夏フェスの舞台を踏み、さらに9月16日には敬愛するスピッツ主催の「ロックロックこんにちは!」にも参加。場内を埋め尽くしたオーディエンスに歌を届けた。
あいみょん:夏フェスは初心に戻れますね。私の名前は知っててもライブは初めての人がほとんどですし、「楽しませたい」が一番ですけど、でもプラスで「お客さんを持って帰らなきゃ」というか、自分のワンマンライブに来てくれたり、音源を買ってくれるようなお客さんにしなきゃっていう気持ちも少しあります。フェスって、アーティストにとってもお祭りで、アーティストが楽しむ場所でもあるなと思うんですけど、「でもあれだけお客さんいるんだから勿体なくない?」って思っちゃう部分もあるんですよ。どうせなら自分のワンマンライブに連れていきたいので、いかに自分の魅力を見せられるかが重要やなと思ってます。
「フェスはロックバンドの場所」って未だに思っちゃってる部分もあったりはするんですけど、でも私はロックバンドではないですし、聴かせて、酔わせるライブをしようと思ってます。シンガーソングライターの後輩にアドバイスしたいですね。手は上がらなくてもいいんだよって。自分のライブはロックバンドみたいにモッシュが起きることはないかもしれないですけど、「私が見せるべきものはこれ」っていう風に切り替えてやってます。だからフェスはMCもほとんどないですし、「歌で勝負」っていう気持ちですね。
もうひとつ、今年の夏にはあいみょんにとっておそらくは生涯忘れられないであろう大きな経験もあった。以前から大ファンであることを公言していたスタジオジブリの新作映画『君たちはどう生きるか』に、声優としてヒロインのヒミ役で参加。2021年末、ラジオ番組「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ」に出演した際、「いつか宮﨑さんの作品に携わらせてほしい。それも『声』をやってみたい」と鈴木に伝えたことをきっかけに実現したこの出来事を、あいみょんは丁寧に言葉を選びながら振り返ってくれた。
あいみょん:そもそも鈴木さんとお話できる機会があるなんて思ってもなかったので、この機会に伝えることは伝えなきゃ、自分の夢を伝えなきゃと思って、「いつか携わらせてほしい」ってお伝えしました。その後にオーディションを受けて、実際に参加することが決まったんですけど、自分は歌でしか活動したことがなくて、声優はほんまに初めてですし、自分の声に可能性を感じていたことは確かなんですけど、ただ自信は全くなかったですし、怖かったですし、この経験が次にどう生きるのかもまだわからないです。ただでも一生懸命やりました。後悔のないように、とにかく一生懸命やりました。本当にそれだけでしたね。
私ももちろんジブリ大好きですし、私以上にジブリが大好きな人がこの世の中にはたくさんいて、その人たちのことを思うと、がっかりさせないようにしたいというか、声には好き嫌いがあると思うので、それは全然いいんですけど、ただ一生懸命やったっていう事実だけあれば、少しは認めてもらえるかなっていう気持ちで頑張りました。でもほんまに素敵な経験でしたね。それこそ一生に一度と思ってますし。ただこのことが音楽に生きることもきっとあるはずで、だからこれから私がどうやって生きていくのかが全てかなと思いますね。この作品を経て、またあいみょんとして生きていく中で、いつかきっと、この経験が糧になるようなときが来るかもなっていう風に思ってます。
朝ドラ、ジブリ、ツアーに夏フェスと、濃密な2023年も残り3か月。「AIMYON TOUR 2023 -マジカル・バスルーム- ADDITIONAL SHOW」の初日、10月3日の大阪・フェスティバルホールで初披露され、その日のライブ中にサプライズで配信リリースされたのが新曲“ノット・オーケー”だ。〈想像ができる ひとりで居ること 2日目の湯船も 透き通っているんだろう〉という歌いだしからは、「マジカル・バスルーム」とのリンクが感じられるが……。
あいみょん:作ったのは“初恋が泣いている”のレコーディングあたりだったから、たぶん去年ですね。ここ最近も曲はいろいろ作ってるんですけど、せっかくやったらわりと最近書いた曲で、ちょっと面白い、新しいような楽曲を出したいと思って、この子がいいんじゃないかって。歌詞はほんまにたまたまで、私も途中で気付きました。「湯船って入ってますよ」「ほんまや」とか言って。ファンの人はもっと最近作ったと錯覚するでしょうね(笑)。
二胡を彷彿とさせるストリングスが印象的な“ノット・オーケー”は、エキゾチックな雰囲気のポップチューン。オリエンタルな旋律も含め、この歌謡曲テイストはやはりあいみょんらしい。今年は韓国でも“愛を伝えたいだとか”をはじめ、あいみょんの楽曲が盛り上がりを見せていたが、この曲の持つアジア的な雰囲気はより多くの国にアピールできそうだ。
あいみょん:今回ディレクターがこの曲をすごく気に入ってくれたんです。まだアレンジを誰に頼むとか決まってないのに、ドラムとベースを入れてくれて。私としてはわりとサラッと作った曲だったので、すぐにリリースするとは思ってなかったですし、アレンジのイメージもまだ湧いてないときだったので、ディレクターの最初のイメージをまず伝えてもらって、それから田中(ユウスケ)さんと一緒にスタジオに入って、「もっとこうしましょう」みたいに話し合いながら作っていきました。
歌謡曲っぽさはアレンジの段階で出たと思います。作ったときはいつも通りの自分の楽曲っていうつもりだったんですけど、アレンジで一気にこの昭和歌謡感が出て、こういう雰囲気は私ももちろん大好きですし、「男性がスナックとかで歌ってくれたらいいよね」みたいなことも言ってたので、またいろんな世代の方に聴いてもらえる楽曲になったらいいなと思ってます。
〈これが最後の恋でも 理解はできるだろう〉〈ダメに成る時は成るでしょう〉とどこが客観視したような目線が切なさを引き立てる歌詞は、グッドでもバッドでもない、「ノット・オーケー」な2人の不安定で絶妙な距離感を描き出している。
あいみょん:またディレクターとの話になっちゃうんですけど(笑)、そのディレクターは自分の父親よりも上の年齢で、ただよくメールもしますし、友達みたいな感じで、恋愛の話もたまにするんです。この曲はそうやって話してたことがヒントというか、きっかけにはなったんですよね。それでバーッと歌詞も書いて、「めっちゃいい曲できたんですよ」って聴かせたら、その日に「いいやん!」みたいになってくれて。
自分の中では〈2日目の湯船も 透き通っているんだろう〉がすごくキーになってるから、最後にもう一回言おうと思って入れました。要は「1人しか入ってないから」っていうことで、「1人でいること」を上手く表現できたらなって。それで「1人」をキーワードに書き始めて、一緒にいるけどいないことも想像できるし、あなたがいない風に話すことだってもうできるっていう、そんなイメージが湧いたんです。
〈ダメに成る時は成るでしょう〉みたいな話は実際した気がします。どれだけずっと一緒にいても、でもダメになるときはなりません?みたいな。これは私の中の男女間のテーマでもあるというか、どれだけ嫌なことがあっても、こいつ無理やなとか思っても、一緒にいちゃうのはまだお互い思いやってるからで、そういうことが続いたとしても、ダメになるときはダメになる。そういう話をした記憶があるので、そこから出てきた歌詞やと思います。
こういうカタカナで英語っぽいタイトルは普段あんまりないですけど、Netflixに『ノット・オーケー』っていうドラマがあって、それを見てたんですよ。今回タイトルは最後に付けたんですけど、〈想像ができる ひとりで居ること〉とか、「ちょっと強がってるけど、でも大丈夫じゃない」っていう心理にぴったりのタイトルやなと思って。よく言うじゃないですか、「女性が大丈夫って言うときは全然大丈夫じゃないときやから」みたいな、あの感じですね。
「AIMYON TOUR 2023 -マジカル・バスルーム- ADDITIONAL SHOW」は残り5本で、10月19日には『らんまん』の舞台である高知での公演も行われる。“愛の花”のような物語にしっかり寄り添って作られた楽曲の一方で、より感覚的に、自分の「好き」をそのまま表現した“ノット・オーケー”をリリースすることは、表現者としてのあいみょんにとってとても自然で、健康なことだと言っていいだろう。ツアーファイナルは11月2日の和歌山県民文化会館大ホール。そして、2023年も最後まで一気に駆け抜けていくはずだ。
あいみょん:どの曲ももちろん自分が作ってるので、全部が私の楽曲なんですけど、やっぱり“ノット・オーケー”みたいな曲はより一層自分らしい、私のやりたい音楽の象徴に近いと思いますね。歌謡曲は自分のルーツでもあるので、こういう楽曲が自分の中に加わるのはすごく心強いですし、ツアーでもみんなに喜んでもらえたらいいなと思ってます。
インタビュー&テキスト / 金子厚武