CM SONG
CM ソング
資生堂ビューティーウエルネス
オフィシャルソング
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ミュージックビデオ
あいみょん – リズム64 【very short movie】
OFFICIAL
INTERVIEW
インタビュー
2024年最初のリリースは
初の書き下ろしCMソング
何かを選びながら進む人生を歌う
『リズム64』
あいみょん2024年最初のデジタルシングルは「資生堂ビューティーウエルネス」のオフィシャルソング『リズム64』。これまで数多くのドラマや映画の主題歌を書き下ろしてきたあいみょんだが、CMソングを書き下ろしたのは意外にも今回が初めて。物語や脚本があるわけではなく、「美しい、は生きている」というブランドコンセプトに沿って曲を作ることは初めての経験であり、その制作を「めっちゃ難しかった」と振り返る。
あいみょん:CMの監督がミュージックビデオでお世話になってる山田智和監督で、「どんな感じのCMになるんやろ?」って想像しつつ、今回はインナービューティーがテーマやから、恋愛とかじゃなくて、「体の中のリズム」みたいなイメージがありました。「美しい、は生きている」がコンセプトやし、「自分の心臓のリズムで生きる」みたいなイメージが合いそうやなと思って、それで自分の心臓のBPMを測ってみたんです。
“リズム64”というタイトルが発表されたときに、多くの人が「64ってなんの数字?」という疑問を抱いたはずだが、その答えは心臓のBPM。おそらくあいみょんファンならすぐに〈僕の心臓のBPMは 190になったぞ〉を思い出すだろう。恋愛のドキドキを「190」で表現した“君はロックを聴かない”に対し、“リズム64”は普段の生活でのリラックスした心の状態を表している。
あいみょん:〈だけど 今 触ってみる 胸のリズムが 大丈夫だって跳ねているから〉っていうサビの歌詞ができたから、自分が一番リラックスしてるときの心臓のBPMを測って、それをタイトルにしようと思ったんです。最初に「64」をスタッフさんに言ったときは、「遅くない?大丈夫?」って心配されたんですけど、「60~100未満」が正常値らしくて、だから「64」は鬼リラックスした状態なんやろうなって(笑)。
それぞれの人生にはそれぞれの生きるリズムがあって、それが「美しい、は生きている」っていうコンセプトにも繋がるし、インナービューティーとも繋がるんじゃないかと思いました。このテーマに沿ったサビができたら、あとは思いつくままに書いても大丈夫そうだなと思ったので、そこからは自由にサーッと書けましたね。
CMでもフィーチャーされている印象的なサビ始まりの“リズム64”は関口シンゴがサウンドプロデュースとアレンジを担当。アコギとシンセを組み合わせたオーガニックなトラックを基調とした中で、あいみょんの歌の表情も曲のテーマ同様にリラックスした雰囲気だが、Aメロの変則的なリズムなど、わずかな違和感がいいアクセントになっている。
あいみょん:CMに曲を書き下ろすのは初めてだったので、スタッフさんから「せっかくだから、今までにないような、ちょっと変わった曲にしてみない?」みたいなアイデアをもらって。だからAメロのリズムとかはこれまであんまり作ってこなかったようなリズムになって、自分の曲なのにレコーディングめっちゃ大変でした。あとはCMの曲ということもあって、「サビから始まるのがいいかも」という話もあったので、ひさしぶりにサビ始まりの曲にして。サビ始まりって自分の中では“どうせ死ぬなら”とか、昔の曲しかないイメージだったので、それもすごく新鮮でしたね。
「美しい、は生きている」というコンセプトから「自分の心臓のリズムで生きる」というテーマを導き出し、そこから「何かを選びながら人生を進んでいることを歌った楽曲」へとメッセージ性を広げているのもあいみょんらしい。〈選んできた 今までも 迷いながら そうやって ひとつ犠牲を作らなきゃ〉という歌詞は、シンガーソングライターとしてキャリアを重ねてきた今だからこそ書けたラインだ。
あいみょん:私「選択しながら生きてる」っていう感覚がめっちゃ好きで。昔書いた“強がりました”もそういうテーマで、選ばなかった人生を想像するのとかも楽しいし、常に分かれ道が何本かあって、みんなそれを選んで生きてるんだっていう、その感覚がすごく好きなんです。それで女神が出てきて、「あなたが落としたのはどっちですか?」って聞いてくる、そのイメージがすごく湧きました。
こういうのは大人になったからこそ出てくるワードなんかなと思います。これまで本当に選択の繰り返しで、どっちが正解かわからなくて後悔することもありましたし、嘘をついて「落としたのはそっちです」って言いたいときもありましたしね。サビ以外は結構辛口っぽい歌詞になってるんですけど、CMには清野菜名さんが涙を流すシーンもあると言われたので、一見明るい曲やけど、そこまで明るい曲にしなくてもいいのかなっていう感じもありました。
〈あんたは誰なの? 何が分かるのか インチキなんだよ〉〈詰まる喉の蛇口捻って 出せるもの出して生きること それは幸せなんだろうか〉といった2番以降の歌詞からは、インターネットやSNSにおける悪意や攻撃的な言葉が人々のメンタルを容易に傷つけうる今の社会の危うさを感じさせる。そして、そんな時代だからこそ自分の心地いいリズムをキープすることはとても重要で、それがメンタルケアにも繋がるのだと言える。
あいみょん:SNSやネットの誹謗中傷もそうですけど、知らない顔の外敵がたくさんいて、それによって自分の内に悪玉が溜まっていくみたいなイメージはすごくあって。自分のことは自分が一番わかってるはずなので、全てがインチキに思えるというか、「お前は誰ですか?」とか、そういう暗い気持ちにもなりがちですけど、結局最後は自分を信じてやっていかなきゃなって、そういう気持ちも歌詞には表れてると思います。
言いたいことを全部言ったらいいわけじゃないとも思ってて、私は基本的にはSNSで怒りの感情をなるべく出さないようにした方がいいなと思ってます。ほんまは言いたいこといっぱいありますし、知らん顔の知らん誰かにブチギレたくなるときもある。やけど、それを吐き出すことによって幸せになれるわけじゃないから……それも選択ですよね。吐き出すのか、吐き出さないのか。そこでも人生が変わってくると思うんです。
では「吐き出さない」を選択しているあいみょんは、どのように心のケアをしているのだろうか?
あいみょん:私普段あんまり怒らないんですよ。沸々と「うぜー」とか「なんじゃあいつ」とか思うことはあるんですけど、心の底からブチギレるっていうのがそもそもあんまりないんです。だからメンタルケアみたいなのもそこまで意識してるわけじゃないですけど……最近だと手話の練習をしたり、手芸みたいなこともやってたり、音楽とは全く関係ないことをやりますね。あと私かわいいものが大好きなので、かわいいものを見てたら心が落ち着くんですよ。動物もそうですし、自分で作った手芸の写真を撮って、「かわいい!」とか思ってる時間で結構落ち着くというか、そういうタイプかも。
アーティストはめっちゃ浮き沈みがあるように思われがちですけど、私は意外となくて、とりあえず楽しそうなことをやってれば大丈夫。それこそ今回資生堂ビューティーウエルネスの試供品をもらったんですけど、それだけでめっちゃテンション上がるんですよ。中身一緒やのに特別な感じがするというか、「まだ誰も使ってへんの試せるんや」って、それだけで機嫌よくなっちゃう(笑)。薬局に行って使ったことないフェイスパックを買ったりとか、意外とそういうちょっとしたことが大事だったりする気がします。
すでに9月から来年の年明けにかけて行われる全国ツアーの日程が発表され、今年も制作やライブを積極的に行っていく予定だというあいみょん。64のリズムで心と体をリラックスさせることが、さらなる創作の爆発や充実したステージにもきっと繋がって行くはずだ。
あいみょん:去年のツアーでは喉に限界を感じる瞬間がちょっとあったりもしたんですけど、それも結局は自分の生活リズムがあんまりよくなかったからだと思うんですよね。次のツアーはアリーナやからホールよりも動き回るやろうし、体力も使うと思うので、そこはほんまにしっかりしないとなって。なので、まずはお酒をガバガバ飲まない(笑)。あとは定期的に体を動かす……めっちゃ普通のこと言ってますけど、長く続けるためにはやっぱりそれが重要やなって。
自分に合った生活のリズムって絶対あると思うんですよ。今年は習い事イヤーにしたいっていうのもちょっと思ってて、最近いろいろ新しいことをやり始めてるんですけど、「時間がない」っていうのはやっぱり言い訳だったかも。もちろん本当に時間がないときもありますけど、そうじゃないときは自分で悪循環なリズムを作ってしまってただけやなって。今年はもちろん音楽をやりながら、ライブもやりながら、習い事とかもしながら、ちゃんと自分にとって心地いい生活のリズムで生きてみたいなって思いますね。
インタビュー&テキスト / 金子厚武